ミンミン・ジャージャーと暑っ苦しい蝉の大合唱を聴きながら、森ノ宮
のピロティーホールへ奈良岡朋子さんの朗読を聴きに行ってきました。
井伏鱒二の「黒い雨」という本は家の本棚には昔からあったのですが、
読まずじまいで、この折にとさらっと前日読んでから望みました。
シンプルな舞台装置に白のブラウスと黒のパンツ姿でこれもまたシンプ
ル。
さっそうと舞台中央にお座りになって。
女性の歳を言うのも憚られますが、89歳とは思えない佇みそして張りの
ある美しいお声。
そして淡々と、そんなに抑揚もなしに、登場人物に合わせて声の変化を
見事につけて語られます。
だからこそ、聞き手の心にストレートに響くのでしょう。
奈良岡さんご自身が15歳で東京大空襲に遭われた実体験もあり、戦争
の恐ろしさや愚かしいことを、戦争体験者自身の義務であり、権利だと
そしてそのことが役者人生の終幕のライフワークであると、他の記事で
読ませていただきました。
車椅子に乗ってでもこの活動を続けていきたいと、その強い心が、朗読
のお声にそのまま反映しているかの様です。
何も罪もない人々が、戦争に何の得があるのか解からないけれど、一部
の権力者のエゴにより、悲惨な目に遭わなければならない。
「黒い雨」に出てくる人々も、善良で優しい人ばかり、なのに原爆で、
一瞬にして、現在も未来もそれどころか過去までも、それこそ真っ黒け
に塗りつぶされたようで、悲しい。
帰りしなに又蝉が煩く鳴き続けていたけれど、鳴かしてあげるよ。
たった1週間しか生きられへんのやもん、74年前の蝉たちは、一瞬に
して死んでしまったのやから、鳴け鳴けもっと鳴きなはれ。
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